第6話 (96/05/10 ON AIR) | ||
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『耕平と結婚する。』 | 作:飛鳥 たまき |
耕平 | 次の角を曲がれば陽子の家はすぐだ。 「陽子さんと結婚します。許して下さい。」 いや、許してじゃないよな。許されなかったら、 耕平、お前は陽子をあきらめるのか? 「おれたち結婚します。いいでしょうか」 何いってんだよ、いいに決まってるだろう! おれはいろいろとつぶやいてみたが 申込の言葉に決定打はない。 角を曲がる前に大きく深呼吸し、 「ようし!」自分に声をかけた。 |
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陽子 | もう、まいった、まいった。 何をそんなに格好つけるのっていいたくなる位の バタバタぶり。 念入りに掃除をして、玄関口には打ち水なんか しちゃって… 「シャンパン用意しておきましたよ」 母さんは一人はりきっている。 父さんは迷ったあげくのはて、明るいブルーの シャツを着た。 |
耕平 | 進められるままにビールを飲み、ウイスキーを飲んだ。 陽子のお父さんは、一時も黙ることなく しゃべりまくっている。 酔いがまわってきた。 陽子がおれをにらんでいる。 |
陽子 | 時計は十時をとっくにまわっている。 耕平も父さんもいい気なもんだわ。 もう知らないから。 |
耕平 | 「耕平さん、そろそろ帰らなきゃ…」 お母さんが時計をみながら言った。 おれはその言葉にはじかれたように正座した。 「陽子さんを下さい。お願いします」 大声で言った。 |
陽子 | 「日曜日、耕平が来るよ」って 言ったときから分かってたはずなのに、 父さんは思いもかけないことを聞いたように 目をまるくした。 一瞬の緊張のあと、母さんがそそくさとたって、 シャンパンをとってきた。 シュワシュワ シュワシュワ シャンパンは祝いの音をたてた。 |
耕平 | お父さんはどうして返事をくれなかったんだ?… 「よろしく頼む」とか「ふつつかな娘だが」とか なんとかいってほしかったよな。 …でも、シャンパンをあけたということは、 OKってことだよなぁ。 今夜の会話を追ってみるが、 頭はとっくに溶けてしまっていた。 垣根のそばを通ると、バラの甘い香りがした。 |
陽子 | シャンパンを飲み干した。ドラマのような感じは ないけれど、それでもうれしかった。 でも、「下さい」は嫌いよっていったのに… これだけは言っておくわ、耕平。 もらわれていくんじゃないからね! |
耕平 | 結局明快なOKの返事はなかった。 でも、あれから1ヶ月たって、お父さんの言った言葉。 「耕平君、将来、君らに何かあった時には、たとえ陽子が 悪くても、…陽子の方が悪くてもだ、一方的に君を 責めるからな」 … 陽子、幸せになろな。 |
陽子 | あれから父さんは不機嫌だ。 「すねてるだけよ」 母さんはそういうけど、 「おめでとう」のことば位あってもいいでしょ。 いいわよ、父さんがOKくれなくったって。 自分で決める。耕平と結婚する。 |
耕平 | 婚約発表はみんなに一斉に知らせたくて 二人の写真を入れて、ハガキを出すことにした。 |
陽子 | 須磨の海岸。 うれしそうな顔、何をいって笑ったんだろう。 耕平も私もいい笑顔してる。 |
一緒にくらしたい。この気持ちを出発にしたいと 思っていました。 互いに求め会うところから出発したいと思って いました。 秋、空がぬけるように青い日、結婚式を挙げます。 5月10日 耕平 陽子 |